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函館地方裁判所 昭和47年(わ)35号 判決

本店所在地

函館市若松町一六番一三号

有限会社

六光堂仏具店

右代表者代表取締役

石塚治一

本籍

同市同町六番地の一一

住居

同市同町一六番一三号

会社役員

石塚治一

明治三六年三月三〇日生

右の者らに対する各法人税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官小木曾国隆出席のうえ審理をし、次のとおり判決する。

主文

被告人有限会社六光堂佛具店を罰金四〇〇万円に

被告人石塚治一を罰金一〇〇万円に

それぞれ処する。

被告人石塚治一においてその罰金を完納することができないときは、金二、〇〇〇円を一日に換算した期間、同被告人を労役場に留置する。

訴訟費用は、全部被告人有限会社六光堂佛具店と被告人石塚治一の平等負担とする。

理由

(罰となるべき事実)

被告人有限会社六光堂佛具店(以下単に被告会社と略称する。)は、函館市若松町一六番一三号に本店を置き、佛壇具等宗教用具の販売を目的とする資本金三〇万円の有限会社であり、被告人石塚治一は、右被告会社の代表取締役として同会社の業務全般を統轄しているものであるが、被告人石塚治一は、被告会社の店舗改築の資金を蓄積するため同会社の業務に関し法人税を免れようと企て、売上の一部を除外して簿外預金を設定する等の不正な方法により被告会社の所得を秘匿したうえ、

第一、昭和四三年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一六、五九五、三〇七円あつたのにかかわらず、昭和四四年二月二八日、同市新川町二六番六号所在の所轄函館税務署において同税務署長に対し、所得金額が一、六三一、九三一円でこれに対する法人税額が四三八、六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて、同会社の右事業年度の正規の法人税額五、五七二、八〇〇円と右申告税額との差額五、一三四、二〇〇円を免れ、

第二、昭和四四年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が二三、八三六、七三二円あつたのにかかわらず、昭和四五年二月二八日、前記所轄函館税務署において同税務署長に対し、所得金額が二、一九七、〇一五円でこれに対する法人税額が五六〇、七〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて、同会社の右事業年度の正規の法人税額八、〇六二、四〇〇円と右申告税額との差額七、五〇一、七〇〇円を免れ、

第三、昭和四五年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が二二、一四四、二一八円あつたのにかかわらず、昭和四六年三月一日、前記所轄函館税務署において同税務署長に対し、所得金額が二、六四一、七三〇円でこれに対する法人税額が七〇三、四〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて、同会社の右事業年度の正規の法人税額七、八一四、七〇〇円と右申告税額との差額七、一一一、三〇〇円を免れ、

たものである。

(証拠の標目)

一、被告人石塚治一の当公判廷における供述(第二回公判期日)

一、被告人石塚治一の検察官に対する供述調書

一、被告人石塚治一の収税官史に対する質問てん末書二〇通(証拠番号甲Ⅳの1ないし20)

一、収税官史作成の調査事績報告書一四通(同甲Ⅰの7ないし20)

一、函館地方法務局登記官作成の商業登記簿謄本

一、収税官史作成の「現金有価証券等の現在高検査てん末書」と題する書面四通(同甲Ⅲの21ないし24)

一、樋口進、林廣市、吉川正、耕作清次、角田浩一、丸日出夫、松本忠夫(三通)、竹沢勝男、石見普二男、島幸俊、小橋勝利、福谷八三および中堂菌補丸作成の各証明書

一、上村和夫、米田利武、大橋道夫、中島泰照(二通)、丹下重明、福田裕三、植木勝彦、大塚英二、五十嵐竜夫、駒形繁房、荒幸男、滝田正幸および藤沼辰男作成の各答申書

一、佐藤清隆、青山元春、堀井勲、北林政雄、黒田永一、朱宮保幸、増田憲次、宇佐見、松原郁次、加藤信平、佐々木鉾二、保志潔之、作田絹枝および栗原貞司作成の各上申書

一、林廣市、耕作清次、竹内八郎、岡部正男、黒川秀治、勝碕襄、大古洋一および宮本堅二作成の各回答書

一、冬野知代子、川口時造、下村桂造、中野常次および津崎恵子作成の各確認書

一、函館大手郵便局長作成の「郵便振替口座写の送付について」と題する書面

一、函館地方貯金局長作成の「郵便貯金等の調査について(回答)」および「郵便貯金等の再調査について(回答)」と題する各書面

一、田子佐吉、北林友吉、古山勝美、大竹弘二、坂野元昭、北村芳弘、渡辺孝雄、山田得二、小嶋源五郎および今井嘉三郎の収税官史に対する各質問てん末書

一、押収してあるサービスダイヤル(メモ在中)一綴(昭和四七年押第二二号の一)、売掛帳(三枚)一綴(同号の二)、振替用紙払込通知票(一二枚)一綴(同号の三)、仕入帳一冊(同号の四)、金銭出納簿兼買掛金元帖一冊(同号の五)、総勘定元帳四冊(同号の六ないし九)、法人税決議書一綴(同号の一〇)、金銭出納帳一冊(同号の一一)、印鑑四一本(同号の一二ないし一五)、手帳一冊(同号の一六)、郵便振替受払通知票二綴(同号の一七)、生命保険料関係書類綴一綴(同号の一八)および国鉄物資部代金払込表一綴(同号の一九)

なお、当裁判所が右各証拠による事実認定に基いて作成した昭和四三年一二月三一日現在、昭和四四年一二月三一日現在および昭和四五年一二月三一日現在の各修正貸借対照表は、別紙第一ないし第三の各修正貸借対照表のとおりである。

(法令の適用)

被告人石塚治一の判示第一ないし第三の各所為はいずれも法人税法第一五九条第一項、第七四条第一項第二号に該当するので、所定刑中いずれも罰金計を選択し、以上は刑法第四五条前段の併合罪なので、同法第四八条第二項により各罪所定の罰金の合算額の範囲内で右被告人石塚治一を罰金一〇〇万円に処し、同被告人が右罰金を完納することができないときは、同法第一八条第一項により、金二、〇〇〇円を一日に換算した期間、同被告人を労役場に留置することとし、

右被告人石塚治一の判示第一ないし第三の各犯行は被告会社の業務に関してなされたものであるから、いずれも法人税法第一六四条第一項により被告会社に対して前記同法第一五九条第一項の罰金刑を科すべきところ、以上は刑法第四五条前段の併合罪であるから、同法第四八条第二項により各罰金の合算額の範囲内で被告会社を罰金四〇〇万円に処し、

訴訟費用は、刑事訴訟法第一八一条第一項本文を適用して、全部被告会社と被告人石塚治一に平等に負担させることとする。

(情状)

本件犯行は、被告人石塚治一が老朽化した被告会社の店舗の改築の必要に追られ、これを四、五階建のビルに改築するための資金を蓄積する目的のもとに、右会社の売上金の一部を除外して簿外預金を設立する等の不正な方法により被告会社の所得を秘匿したうえ、判示のとおりの法人税を免れたものであるが、同被告人は、被告会社の店舗改築の資金を蓄積するため脱税したとはいえ、右被告会社が被告人石塚治一およびその家族で経営する、いわゆる同族会社であり、同被告人が一切の権限と責任をもつて右被告会社の経営にあたつていることからすれば、本件脱税は、被告人石塚治一の全く私的な利益を追求する目的でなされたといえること、本件犯行は、三年間にわたり、しかも、実際所得額の一割前後という極めて過少な不正申告がなされ、その結果、脱税額は、判示第一の年度において五一三万余円、同第二の年度において七五〇万余円、同第三の年度において七一一万余円、合計一、九七四万余円という巨額に達していること、被告人石塚治一は、五、六年前にも三、四百万円の脱税により更正決定を受けているにもかかわらず、再び本件のごとき脱税を敢行したものであることからすれば、被告会社および被告人石塚治一は、本件犯行につき厳しくその責任を問われなければならないものであるが、他方、同被告人は、査察、捜査の当初より犯行を素直に認め、これに協力的であつたことが疑われ、また、国税局の査察終了後修正申告をして、現在では本件脱税の本税のほか、延滞税、加算税を完納していること、被告人石塚治一は、本件犯行を深く反省し、今後被告会社の経理をガラス張りにし、再び同じ誤ちを繰り返さない旨を誓約していること、同被告人は満六九歳の高齢者であることその他諸般の事情を考慮して、同被告人につき所定刑中罰金刑を選択し、被告会社および被告人石塚治一に対し、所定金額の範囲内で主文のとおり量刑した次第である。

よつて、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 堅山真一 裁判官 今井功 裁判官 久保真人)

右は謄本である。

昭和四七年五月三〇日

函館地方裁判所

裁判所書記官 緋田久一

別紙第一 修正貸借対照表(昭和43年12月31日現在)

〈省略〉

別紙第二 修正貸借対照表(昭和44年12月31日現在)

〈省略〉

別紙第三 修正貸借対照表(昭和45年12月31日現在)

〈省略〉

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